学びのみちしるべ【第19回】/経営学

大学での学びの中身と、その学問が社会でどう役立つのかを大学の先生が解説。
進路選択のみちしるべとなるよう、高校での学びがその学問にどうつながるのかもお聞きしました。

立教大学 経営学部/大学院経営学研究科 佐々木 宏 教授


 この学問の内容、面白さは? 

人が集まり組織をつくるところに必ず存在する。
経営学は世の中の「なぜ」を解明する学問

 経営学は社会科学の一分野です。経営戦略論、経営組織論など経営学独自の分野に加え、会計学、経済学、社会学、心理学など非常に多くの学問領域と関連があります。さまざまな学問領域の知見を駆使しながら、組織をいかにうまく運営するかを解明していくのが経営学です。なお、企業だけではなく、スポーツチーム、官庁、学校、非営利組織など、人が集まってつくられる組織すべてが研究の対象になります。
 経営学には、企業が経営資源をいかに効率的に運用し、最大の成果を生み出すかなど「組織」を単位として研究する側面と、働く人やチームがいかにモチベーションを高めて組織目標に貢献するかなど「人」を単位として研究する側面の、2つの次元があります。いずれも理論的な仮説検証、実企業のケーススタディ、理論の実務への適用など、理論と実践が密接に結びついているのが大きな特徴です。例えば、商品販売の実務の中で何が行われているか、データをとって実証すると、そこから新しい発見が得られます。そうした積み重ねからヒントを得て新たな理論が生まれる可能性があり、それが再び実践に生かされていく可能性もあります。
 私は、授業ではマーケティング・リサーチを担当しており、消費者行動を追跡して、商品をどのように知り、どのようなルートで購入するに至ったのかを分析しています。デジタルトランスフォーメーションといって企業がデジタル化によってどのように変化していくか、AIをどうやって組織に適用させるといいのか、などといった研究も進めています。経営学の実証研究では、分析から得られた事実をベースに「なぜ?」に答えていくところがこの研究の醍醐味です。しかも、経営環境や企業自身が時代と共に変化するので、新しいテーマが次々と生まれてきます。それにチャレンジし続ける面白さが経営学にはあります。

 社会でどのように役立つ? 

学んだことを実社会のさまざまな場面で活用できる。
学べば学ぶほどそれが自分のキャリアにつながる

 経営学は実践の学問であり、机上で理論だけ学んでもすべてを理解できたことになりません。そこで、私のゼミでは15年以上前からさまざまな企業と産学連携活動を行っています。例えば、2019年には「30~40代のファミリー層の集客を図りたい」という近隣の百貨店の経営課題に対し、その世代のファミリー層の消費者行動アンケートを実施。分析結果を基に学生たちがいろいろなアイデアを発想し、「ハロウィンスクール」と題したイベントを企画、実施しました。また、今年は「ほっともっと」を経営する株式会社プレナスと産学連携で商品開発を行いました。ゼミ生約40名、6チームのプレゼンによって選考されたのは、コロナ禍で家に閉じこもって外食できない人たちを力づけたいという思いを込めたお弁当。こうした企業との連携での学びはきっと自分の将来に役立ちます。学べば学ぶほど、自分のキャリアの土台づくりにつながるのも「実践の学問」ならではの魅力といえるでしょう。

RANGE

 佐々木ゼミと企業が連携して開発した商品
 『 ~ラザニア風パスタ~ギルティ弁当 』は
 10月18日から「ほっともっとグリル」3 店舗で発売中。








 高校の科目とのつながりは? 

すべての教科が経営学に通じる
学びに無駄なことは何一つない

 経営学の先端分野に関する文献はほぼ英語なので、英語力が必要です。プレゼンやレポートをまとめるには国語力、論理的思考力を鍛えるためには数学や物理、化学などの理系科目が役に立ちますし、歴史、地理、公民など社会系教科は経営学と密接に関連しています。要は、高校生が学ぶことにまったく無駄はないということです。だからといってすべてが得意である必要はありません。自分の強みを生かしていけばいいのです。そして、各教科以上に大切なのは「なぜ?」という問題意識。日頃から身の回りの商品を見たときに、「なぜこういう売り方をしているのか?」「なぜ、この値段なのか?」といった視点で考えると、経営学を学ぶことの面白さに気づくことができるはずです。


(取材・文/いのうえりえ)

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