カレッジマネジメント Vol.180  May-Jun.2013

カレッジマネジメント Vol.180 May-Jun.2013

“学ぶ”と“働く”をつなぐ

リクルートが行う調査データ、国内外の先進事例、人材市場、専門家の解説などにより、「大学経営のサポート誌」としてタイムリーなテーマを発信しています。

編集長が語る 特集の見どころ

 就職が早々に決まる学生がいる一方、なかなか決まらない学生も少なくない。一体その違いは何なのだろうか。昨年、リクルートが初めてまとめた「就職白書2012」を分析、議論しているうちに、その違いは「就活以前」にあるのではないか、という一つの結論に至った。

 卒業後の進路を決める活動がうまくいかない学生の特徴は、いわゆる「就活」スタートと同時に、自分の将来のことや、業界研究、仕事研究、社会の研究、そして具体的な就職先選びという様々な項目を一遍にこなし、消化できないまま活動を続ける。つまり「受け身の就活」である。その一方、進路を決める活動がうまくいった学生の特徴は、入学時から大まかな将来のことを考え、学生生活を通じて様々な社会との接点を持ち、理解を深めている。それと並行して、大学のカリキュラムを通して基礎力・応用力・学力を徹底的に鍛えている。

 うまくいく学生は、大学の若年時から、キャリアデザインを考え、カリキュラムを通じて実力をアップさせ、インターンシップやOB・OG訪問などを通じて、同世代の同質的な仲間だけでは得られない社会の仕組みやロールモデルを学んでいる。そして、そのうえで「就活」を迎えるのである。言わば、社会との接点を通じて、「主体的・能動的な就活」を行っているのである。

 一昔前の大学であれば、そうした社会との接点は少なかった。だから、学生も面接では、アルバイトとサークルの経験を主張していた。しかし、昨今の大学では、大学が主体的な学生を育成するための様々な教育改革に取り組んでいる。2012年8月の中央教育審議会答申「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~」を受け、主体的に学び、考え、行動する人材を育成する教育への転換が図られている。まさに、社会が求める人材育成への道筋はここにあると、就職白書の結果は示している。

 今回は、3月に発表された最新の「就職白書2013」」で、日本経団連の倫理憲章改定後初の就職活動を振り返るとともに、主体的な学びや意欲を引き出すアクティブラーニングの動向を整理した。そして、受動的な学生をいかに主体的・能動的な学生に育てていくかについて、様々な取り組みをされている大学の事例を取材した。

 「就活」は単なる内定を取るための活動でなく、これまで学んできたこと、経験・体験してきたことを整理し、未来につなげるための活動である。3年後、5年後が見えない時代だからこそ、主体的に考え、チャレンジできる人材が求められている。学ぶことと、働くことがうまく接続し、学生たちのより良い未来につながることを期待したい。