日本でも広がり始めたMOOCsとは

 誰でも無料で、世界の有名大学のオンライン講義を受けられるMOOCs。2012年からアメリカで急速に発展したこの動きに対し、日本でも東京大学と京都大学が参加を表明して話題を呼んだのは記憶に新しい。

 ただ、「アメリカのこと」「一流大学しか参加できない」「英語授業のみ」など、MOOCs参加への壁は厚く、自分にはあまり関係ないと捉える大学関係者も多い。こうした流れを打破しようと、今年10月に「日本オープンオンライン教育推進協議会(JMOOC)」が設立された。国内大学、企業等が協力し、日本語の授業をオンラインで無料配信する、日本独自のプラットフォームだ。2014年春から、まずは13大学の教員によるオンライン講義がスタートする。「社会人教育の機会を増やす」(白井克彦理事長)ことも大きな目的の一つだ。

日本オープンオンライン教育推進協議会設立発表会

 MOOCsは一方で、「破壊的イノベーション」とも呼ばれるように、高等教育を大きく変える可能性を持っている。既存の大学教育がオンラインに取って代わられるのではないか、さらには、授業が無料で配信されると、授業料を払って大学に通う学生が減り、特に私学の経営の根幹が揺らぐのではないかといった懸念があるのも事実だ。

 他方で、大学の授業を変えるプラスの面も期待されている。MOOCsによって、従来、教室で受けていた講義をオンラインで自宅学習し、実際の対面の授業では、ディスカッションやPBLなどを行うといった“反転授業”が可能になるのだ。既に国内外においても、反転授業や、教育科目のプログラムの中にオンライン教育を一部取り入れる“ブレンディッドラーニング”の事例も現れ始めている。JMOOCにおいても、東京大学とNTTドコモ社との間で「反転学習の有用性検証」の試みが行われている。

 つまり、大学に求められる役割が変わりつつある中、大学教育を主体的に学ぶ場に変える必要がある高等教育界にとって、アクティブラーニングの一手法として、MOOCsは有効である可能性がありそうだ。

 このように、大学関係者にとって、決して無関心ではいられないMOOCs。カレッジマネジメント7月号から、東京大学の船守美穂特任准教授による「21世紀の新たな高等教育形態―MOOCs」の連載をスタートしたところである。ぜひご一読頂きたい。

カレッジマネジメント編集室 能地泰代 (2013/11/20)